– 暮らしと滑走 第1回 –
Shuさん/ジュエリー作家

羊蹄山の麓に住んでいるジュエリー作家のShuさんはスキー好きで知られています。昨シーズン4月、Shuさんは『ニセコオートルート』を1日で走破し、スキー好きの間で話題となりました。『ニセコオートルート』とは、ニセコと岩内を結ぶニセコ連山を縦走するBCツアー。普通は3日間に分けて縦走するのが一般的です。春は自転車でスキーに行く写真も披露してくれたShuさんのスキーライフをお聞きしました。

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文:伊藤雅之

写真:カリプ アサコ

KODAMA(以下、K):まず、昨シーズンの「ニセコオートルート1日縦走」の話から聞かせてください。

Shuさん(以下、S):あれは4月中旬でした。実はツアーの前の晩、一睡もしていないんです。いっしょに行った友達も同じ。送迎をしてくれた友達も一睡も。前の晩は遅くまでルートをどちら方向にするか、延々と議論していて眠り損ねました。

K:ルートを教えてください。

S:ルートは《岩内岳=目国内岳=前目国内岳=白樺山=シャクナゲ岳=チセヌプリ=ニトヌプリ=イワオヌプリ》。縦走には朝5時から夕方5時、12時間ほどかかりました。普通の縦走だと尾根づたいで真っ直ぐ進むのですが、僕たちは滑り重視。登り返しが大変になってもいい斜面をなるべく滑りながら進みました。

K:なぜ1日で?

S:1日で縦走するメリットは少なくありません。まず3日だと荷物が多くなります。さらに3日の中のどこかで悪い天気にあたる可能性が高くなります。1日だと雪の状態を含め、ココという晴れた日にピンポイントで行けます。硬めの朝の雪がだんだん緩んで最高のシャバ雪に変わり、日が落ちるに連れ、また少し締まってくる。1日の雪の変化を感じながら滑れるのも楽しみの一つです。

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K:Shuさんは羊蹄もよく滑りますよね。

S:羊蹄はいろいろな方向から、シーズン10回くらい登っています。羊蹄は自分にとって特別。登りはいつも試練となりますが、頑張って登った分、滑走距離が長く、斜度も良いので格別です。標高が高いし、独立峰なので風の影響を受けやすく外れることも度々ありますが、それでも良い日に行けた時の喜びは格別。なので、何度も行きたくなります。

実は、ニセコに移住して来たきっかけは「ニセコはパワースポットだ」と、ある人から聞いたからでした。今思えば、それは羊蹄山のことだと感じています。そして今、偶然にもこの山の裾に住んでいるのだからなおさらです。

K:ほかには、どんなところを滑りますか?

S:シーズン中は、ほぼ毎日滑ります。スキー場が開いているうちはスキー場を中心に滑り、良い日を選んで山へ滑りに行きます。スキー場が閉まったら、雪がなくなるまで、山で滑ります。5月末から6月中旬くらいまで。

ニセコ山系の山は一通り滑りましたが、実は数あるニセコの山々の中でもアンヌプリほどいい斜面がある山はそんなにはありません。ニセコアンヌプリは、いい斜面がいっぱいあるという意味では、やはりすごいです。

自宅は、ニセコユナイテッドの4つのスキー場からほぼ同じ距離にあります。シーズン中は、全山券を買ってその日のコンディション次第でどこからスタートするか決めますが、ピークゲートが開き始めたらピークに行きやすいということで、ヒラフが多い。それで、雪が止んで天気が安定すると、山(バックカントリー)に行きます。羊蹄、イワオヌプリ、チセヌプリ、岩内岳、尻別岳なども毎年かならず滑ります。今はとにかく毎日滑る環境を作っています。

K:春にスキー背負って自転車でスキーに行かれたようですが?

S:あの時は、ちょうどパノラマラインが開いて、五色温泉の奥(道道58号倶知安ニセコ線)も道の雪は融けていたのに、ゲートは閉鎖されたままでした。もったいないなと思って、ゲートから先を自転車で入って行ったんです。人も少なくて、結構面白かったですね。

K:イワオヌプリを滑るためだったの?

S:アンヌプリの北斜面です。春になると、斜度もあるし、とてもいいです。充分すぎるくらい雪があります。シャバシャバの本当にいい状態だったら最高なんですが、だんだんデコボコになってきます。

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K:Shuさんはよく愛犬(パケ)と滑っていますよね?

S:パケといっしょに滑ると非常に面白いです。冬山は雪が深すぎないときはパケと一緒に行くことが多いです。登りは誰よりも早い。行ったり来たりを繰り返し、人間よりはるかに多く歩きながら、人間の何倍ものスピードで登って行きます。下りは、厳冬期はさすがに遅れますが、それでも人間の滑った跡をうまく利用して素早く走ってきます。

一度だけ、雪崩に巻き込まれ40メートルほど、流されたことがありました。視界が悪い中、1番後ろを登っていたため、友人は誰も気付けなかったのですが、パケだけが気付き、降りてきてくれたときには我を取り戻し、ホッとしたものです。

K:犬の運動能力は凄いんですね。

S:人間はジャケット・スキーなど合わせたら何十万円もの装備が必要なのに、犬は装備も一切必要ありません。水さえもいらないんです。水分補給に雪を食べますから。たまに口を開けて雪に顔を埋めたままダーっと走り出すんです。毛も冬になると生え変わって装備がかわる。そのかわりパケは小さいから50センチ以上降ったら連れていきません。雪に溺れてしまったり、著しく遅れてしまうかもしれないから。

ただ、動物が出没すると厄介なんです。沢一本分とか余裕で追いかけてしまって、さすがに制御がきかなくなってしまって15分くらい帰ってこない。ちょっと心配になりますね。

春の雪になると下りでもパケは本当に早いです。ピッタリ自分についてきます。

K:Shuさん、今日はワクワクする話をどうもありがとうございました。

(エピローグ)

Shuさんは昨シーズンまでは、昼は滑って、夜はスキーチューンのお仕事をされていました。今年はジュエリー製作に専念されるとのこと。スキーざんまいの羨ましい生活の鍵は、情熱と体力、お仕事のマネジメント能力やたくさんのスキーの仲間、そしてなによりも、奥様や愛犬の理解も大切な要素だとわかりました。

【了】

いとうまさゆき/Max

1971年、北海道江別市生まれ。宿泊業経営。テレマーク歴は今年で20年なるもゲレンデからサッパリ離れられない日々を送っている。東京・オーストラリア・ニュージーランドで貿易と森林経営の会社に所属していたが、2010年にニセコに移住。英語、スキー、観光、自営、田舎で子育て、をキーワードに新しいライフスタイルに家族とともに奮闘中。ニセコは「オルタナティブなライフスタイル」のショーケースであると感じている。日本は、世界でもっともスキーの敷居が低い国で、それが日本のスキーの一番良い点の一つだと考えている。